今までから歯周病を治療するためにいろいろな試みがなされてきました。
ブラッシングの改善による「歯垢=プラーク」の除去
歯石の除去
歯周外科手術
歯周組織再生法
このようなことを頑張って一生懸命におこなえば、確かに歯周病はほとんどの場合で良くなります。
しかし、この「治った」という状態が二年後、三年後、いや、場合によっては一年を経ずしてもとの状態に逆戻りしてしまう事があります。
歯周病は生活習慣病である
歯周病は細菌感染症である
歯周病は遺伝子的な要素が影響している
どれも間違いではないと思います。
しかし、次の動画をご覧下さい。
これは当院で治療を開始した歯周病患者の「治療を始める前」のお口の中のプラークを顕微鏡で観察したものです。
画面の中を動き廻っているのはおびただしい数の「細菌」です。
次の動画は同じ患者のプラークの状態、3週間後です。
前のものと比べて劇的に画面が「静か」になっている状態が見て取れます(除菌されている)。
別の例です。
この画面では画像のなかに「トリコモナスという原虫」が動いているのが分かります。
一週間後の動画です。
前回と同様に画面が非常に落ち着いて、静かな状態に変わっているのが分かります(除菌されている)。
それぞれの患者さんの「お口の状態」も様変わりしています。
実は、これらの例では歯周病を起こさせている細菌に特効性のある抗生物質を投与しただけです。
具体的にはマクロライド系の「アジスロマイシン」に分類されるジスロマックという薬剤を三日間服用して頂いただけです。
このクスリの作用で歯周病を作っている「歯周病細菌」を退治してしまったのです。
歯周病の進行程度を調べる目安となる、「歯周ポケット検査」の比較が次の表です。
治療開始前とその後の比較ですが、中等度から重度の歯周病を表す5mm~9mm以上とういう「深いポケット」の場所が明らかに減少して、病気が快方に向かっています。
歯周ポケットが深い(大きい)ということは、単純に歯を支える「顎の骨」が減っている→歯が抜けてしまう危険性が大きい、という事と考えて頂いてよいです。
これらの例で分かる事は、患者さんのお口の中に「歯周病菌」が居なくなれば病気は治る、と言う事実なのです。
胃潰瘍の原因の一つとされる「ピロリ菌」をお薬でやっつける、という内科の先生の手法と同じ事なのです。
ある程度、きれいに除菌された事を確認してから歯ブラシ指導や本格的な歯石取りが行なわれます。
けれども、お薬を飲んで頂いてリンス剤を併用されますと、それだけで歯垢(=プラーク)が減ってしまうので歯ブラシそのものがとても楽で簡単になります。理由は歯垢そのものが細菌のかたまりで、それが除菌されてしまったからです。
そして、ただ単にお薬で直る、と言うだけではなくこの治療の大切な点は、患者さんのお口の中の歯周病菌の状態を「位相差顕微鏡」で実際に確認しながら有効なお薬を処方して、症状が改善した後も良い状態を維持させていくために「ペリオバスター」というリンス剤で再感染を予防していくという点です。
一般的な他の歯科医院で行なわれている、歯ブラシ指導、歯石のお掃除、歯周外科処置・・だけではおそらく直ったとしても一時的なものに終わってしまうかもしれません。なぜなら歯周病菌は「無くなっていない」からです。
また、歯周病菌を残したままで歯石除去(スケーリング処置)や外科処置を行なう事は菌が全身に散らばってしまうと言う点ではむしろ非常に危険な事といえます。
次の「献血についての注意書」がこの事を証明しています。
このリーフレットでは歯科医院で「歯石取り」などの治療を受けてから一定期間の間は「献血してはならない」 と書かれています。
お口の中で出血を伴う、歯石取りなどの処置を行なうと有害な細菌が血流に乗って全身に散らばってしまうために、ばい菌の混ざった血液を「献血してはいけません」という意味であるのは一目瞭然でしょう。
このようなことからも、まず第一に歯周病菌の「除菌」から治療をはじめることがいかに大切であるかがお分かりいただけた事と思います。
わたしたちの「国際歯周内科研究会」のホームページでは全国でこの「歯周内科治療」が受けられる歯科医院のリストを公開しております。
さらにより詳しく、歯周内科治療を解説した書籍も当院で販売しておりますので、興味や疑問を持たれた患者様はぜひお問い合わせ下さい。