今、25歳以上の日本人全体のうち、その8割以上の国民が罹患していると言われている「歯周病」。
わたしも毎日の診療の中でこの事を強く実感しているのですが、・・・なんともその「事実」に無関心、と言うか、まるで意識がいっていないと言うか・・、あまりにも「歯周病」をなめてかかっているのではないか、と考えさせられる場面に出会う事が多いです。
この病気は「特別な類のもの」を除いては、キチンと治療の出来る歯科医院で、キチンと治療を受けて頂ければ、十分にコントロールの可能な疾患です。
けれど、病気に気が付いていなかったり・・また、気が付いていてもソレを「放置」してしまうと、とても厄介なことになります。
さきほど治療を受ければ「・・十分にコントロールが可能」と書きましたが何故、治療を受ければ「治る」と書けなかったのでしょうか?
歯周病は本来の意味では「治らない」のです。
歯周病は一旦罹患すると生体に対して常に、「破壊的・侵襲的」に病態が進行します。
つまり、自分の「歯周病」に気が付いて適切な処置、治療を受けてそれ以上の病気の進行を止める事が出来ても、この病気にかかる前の「正常で健康的な状態」には(原則として)戻すことは出来ないからです。
ではどう治るかと言うと、「異常で健康的な状態」・・として一応の「治癒」が得られます。
ええ~~っ?? 結局ナンのことなんですかぁ~~? (ーー;)
分かりやすく言うと、歯周病で痩せてしまった「歯肉」や、溶けてしまった「骨」は元のようには回復しませんよ~、と言うことなんですよ。
そしてこの事が治った後の見た目の良し悪し=「審美性」 や、歯の寿命=「噛み合せの安定性」などに影響してしまいます。
だからこそ、出来るだけ早期・・病気の初期の段階で手を打たなければなりません。
「歯周病菌」はもはや「歯」の廻りにだけ病気を惹き起こすのではなく、脳や心臓の血管障害による人命への関与、早産や流産のリスクも通常の7倍! 糖尿病との関連では歯周病が治らないと糖尿病も治らないといわれていますし、高齢者の嚥下性肺炎の原因菌ともされています。
最も新しい研究では、歯周病菌が作り出す「酪酸」がHIV(エイズウィルス)に作用してそれを「活性化」させ、エイズを発症させてしまう・・という論文を日本大学の口腔細菌学の教授が発表し、米国の医学雑誌に掲載されたそうです。
このように単純に「歯科」の範囲だけではなく、全身に様々な悪影響を及ぼす「歯周病」。
歯が抜けちゃっても「入れ歯」があるから別にいいヤァ~~、などという問題ではない事がお分かりかと思います。
そして現代の医学界、医療の現場でこの歯周病の治療を行うことが出来るのは、「歯科医師と歯科衛生士」・・だけなのです。